「離婚したい…」と漠然と思っていても、離婚前にどんなことを決めなければいけないか分からないという方は多いのではないでしょうか。こちらの記事では離婚時に決めなければいけないことや離婚の進め方、離婚の時期について詳しく解説していきます。
勢いだけで物事を進めてしまっては、「もっとちゃんと決めておけばよかった」と後悔することがたくさんあります。
なるべく自分が損をしないような事前準備をキチンと行い、子供への負担がなるべくかからないタイミングを見計らって離婚を進めることをおすすめします。離婚がスムーズに進めば、離婚後の生活にいち早く心を切り替えられます。
離婚後は明るい未来になることを信じて、今できる準備をしていくことが大切です。
離婚する時に決めること・確認すること
離婚する時に決めるべきこと、確認することは、お金・子供・住む場所・戸籍や姓(氏)の4点です。それぞれについてくわしく見ていきましょう。
お金のこと
夫婦共働きで妻もバリバリ働いていた夫婦を除いて、家計収入を担っていた夫と離婚する主婦の場合、収入の少ない方が離婚後にお金で苦労することがあります。
離婚後にお金や経済面で苦労をしないためにも、以下のようなお金のことはキチンと話し合って決めておきましょう。
婚姻費用 | 離婚するまで生活費を受け取ってない場合に請求可能 具体的な金額は算定表に基づいて決定される 自分より相手の収入が高い場合、認められる可能性が高い |
慰謝料 | 法定離婚事由が原因で離婚に至った場合相手に請求できる (不倫・悪意の遺棄・強度の精神病・DV・薬物依存など) |
財産分与 | 婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を1/2づつ分ける 現金・不動産・有価証券・書画骨董などが財産となる ただし住宅ローンや教育ローンも分与の対象となる |
養育費 | 子供の親権者となった場合、相手から受け取ることができる 額については算定表に基づいて決められることが多い |
年金分割 | 婚姻中の年金の納付実績を基に夫婦で分割 「年金分割のための情報提供請求書」を年金事務所に 申請すると将来いくら年金がもらえるか試算できる |
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子供のこと
離婚する夫婦に子供がいる場合、子供の親権や監護権、面会交流について決める必要があります。子供にとって最も幸せなのは何なのかを考えながら、両親がしっかり話し合い決めていきましょう。
親権 | 子供が未成年の場合、親権を父と母どちらが持つか決める 監護権は親権の一部だが、分けて持つこともできる |
面会交流 | 子供を養育していない方の親が子供と会う権利 面会頻度・場所・時間・連絡方法などを決める |
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住む場所のこと
今まで一緒に住んでいた家を出て別に暮らす場合、住む場所をどこにするか、今まで住んでいた家をどうするかについても話し合う必要があります。現在無職の場合は賃貸で借りる際の費用や条件が厳しくなることも考えらえます。
夫婦に持ち家がある場合は、財産分与でどう分けるかが問題になります。また住宅ローンをまだ完済していないケースでは、連帯保証人の解消やローンを借りた金融機関との調整が必要です。
戸籍や氏(姓)のこと
忘れてならないのは自分と子供の戸籍・氏(姓)をどうするかということです。結婚時に夫の戸籍に入った場合、離婚と同時に夫の戸籍から抜けて結婚前の戸籍に戻るか自分が筆頭者の戸籍を新たに作るかを選択します。
特に子供の戸籍の手続きをしなければ、子供は元夫の戸籍に入ったままで自分とは違う戸籍になります。
また戸籍と同様に子供の氏(姓)も何もしないと元夫の氏のままです。子供を連れて離婚をして一緒に暮らしていながら、戸籍と氏が子供と違うという現象が起きてしまいます。
日常生活や子どもの学校などで不便が生じてしまいますので、「子の氏の変更許可申出」を家庭裁判所に提出して子供の氏を変更する必要が出てくるでしょう。
離婚する時の流れ&手続き
実際に離婚に至るには、どのような流れで進んでいくのでしょうか。手続きの方法とあわせて見ていきましょう。
夫婦で離婚の条件を話し合う
離婚する前には上でご紹介したお金や子どもに関することについて、夫婦で話し合いをしてそれぞれの項目について条件を決めていきます。特に子供の親権や養育費、面会交流に関しては子供の将来や情緒にも大きな影響を与えます。
しっかりとお互いに納得するまで話し合うことをおすすめします。離婚の際に決めたことは必ず口約束だけでなく書面で残しましょう。言った言わないを避けられますし、相手の約束不履行に対して法的措置が取れます。
一般的に「離婚協議書」として取り決めを行いますが、公証役場で公正証書にするとさらに契約書としての効力が増します。万が一慰謝料や養育費の支払いが滞っても裁判を起こすことなく強制的に財産の差し押さえが可能になります。
離婚が合意に至れば協議離婚
様々な条件に関してお互いが納得し、離婚することに異議が無ければ「協議離婚」として役所に離婚届を提出できます。協議離婚は離婚する人の9割以上が選択する方法で、夫婦の話し合いのみで離婚ができる、最も時間がかからない離婚の仕方です。
合意に至らなければ調停へ
夫婦による話し合いで合意に至らない場合は「調停離婚」へと進みます。調停離婚は家庭裁判所で行われ、夫婦それぞれが裁判所に出向き自分の主張や希望を調停委員に伝えます。場合によっては弁護士が夫婦の代理人を務めることもあります。
家庭裁判所での聞き取りは一か月に一度程度で、合意に至るまで数か月かかることがデメリットとしてあげられます。一方で本人同士顔を合わせることなく、第三者が入ることで冷静になって話し合いに臨めるというメリットがあります。
調停が不調となったら訴訟を起こす
調停でも決着が付かない場合、裁判訴訟を起こして裁判所による判決が下ります。訴訟をする際には必ず離婚調停を経ていなければならず、これからご紹介する5つの裁判上の離婚原因がないと離婚が認められません。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 悪意で遺棄されたとき
- 生死が3年以上明らかでないとき
- 回復の見込みがない強度の精神病にかかったとき
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
協議離婚と比べると離婚に至るまで長い時間がかかり、経済的な不安も大きくなります。離婚が長引きそうだと思ったら、一人で何とかしようと考えずに早めに離婚裁判が得意な弁護士に相談することをおすすめします。
裁判官により和解OR判決が出される
離婚裁判は離婚そのものについてや離婚の条件について、一つ一つ尋問が行われます。1か月に一度開催日が設定され、判決までは1年~2年かかる場合があります。離婚裁判は主に次のような順番で進んでいきます。
- 訴訟の提起
- 家庭裁判所からの呼び出し
- 口頭弁論・当事者尋問
- 判決
4.の判決に不服がある場合は、告訴や上告することも可能です。ただし別に弁護士費用が必要となり、時間もさらにかかるため告訴や上告まで進む人はあまり多くありません。
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離婚時の周囲への対応はどうする?
離婚する時あるいは離婚した後、周囲の人への対応は悩むところです。どの範囲の人にいつのタイミングで、どれだけ詳しく話すべきかをアドバイスしていきます。
両家の親
自分や相手の親には離婚することが決まった時点でなるべく早めに報告することをおすすめします。たとえ親とうまくいっていないとしても、離婚の報告だけはした方が良いでしょう。
特に子供が小さい場合は、いざという時に大きな助けになるだけでなく、困った時に頼れる相手がいると思うだけでも精神的な安心感を得られます。できれば経緯も含め、両家の親には一番に報告しておきましょう。
勤務先や上司
自分の勤め先や直属の上司にも離婚の報告が必要です。勤務先では人事や総務といった部署に報告をして、次のような手続きを進めてもらいましょう。
- 氏名の変更
- 住所変更
- 新しい緊急連絡先
- 扶養控除の変更
- 雇用保険・健康保険の変更
直属の上司への報告は、仕事をスムーズに進める上で重要です。時短勤務といった勤務体系の変更をお願いする上で重要ですが、信頼関係を大切にする意味でも、上司へは忘れずに報告しましょう。
子供の学校 ・幼稚園(保育園)
保育園や幼稚園、子供の学校の担任の先生には離婚の報告をして下さい。住所や名前を変更する場合だけでなく、学校で子供に対する配慮を行ってくれることもありますので、こちらも忘れずに報告しましょう。
親しい友人・同僚
昔からの親友や親しくしている同僚がいれば、機会をみて離婚の報告をした方がいいでしょう。結婚した時に祝ってくれた友人や離婚の際に相談に乗ってくれた会社の人に離婚の報告をするのは礼儀といえます。
今後も何かと相談しやすくなるのはもちろんですが、報告することで心が軽くなることもあります。具体的に何かをお願いする以外にも親友なら何かと心の支えになってくれるでしょう。
あえて報告しなくても良いケース
子供のつながりで出来たママ友やそれほど仲の良くない同僚にはあえて報告しない方がよい場合があります。離婚の話題はママ友同士の格好の噂の種になりやすいため、ことさら報告しなくても良いでしょう。
またそれほど親しくない友人や同僚には離婚の経緯や詳しい理由までいう必要がありません。とはいえ結婚式に出席してくれたり結婚のお祝いをくれた人には、義務として「いろいろあって離婚しました」という報告をした方が無難な場合があります。
離婚する時期の決め方
離婚する時、届を出す時期についても決めなければなりません。子供の有無や子供の年齢、税金や会社の転勤を考えた際の適切なタイミングについて解説していきます。
子供がいない夫婦・子供が成人済みの場合
子供がいない夫婦の場合、離婚後の生活に不安が無ければ夫婦のタイミングで離婚をしても構いません。たとえ子供がいてもすでに成人済みで一緒に住んでいないなら同様です。
ただ成人した子供がいても一緒に住んでいる場合は、離婚前に子供に相談することをおすすめします。また結婚を控えた子供がいる場合は、子供の結婚式や入籍後に離婚した方がいいケースがあります。
未成年の子供の年齢や人数で決める
未成年の子供がいる場合、子供の年齢や人数によって離婚に適したタイミングは異なります。子供の年齢・人数における適切な時期は以下の通りです。
子供の年齢・人数 | 離婚に適したタイミング |
乳幼児 | まだ小さく離婚の意味がキチンと理解できていないうちは なるべく早めに離婚をすることも可能 |
幼稚園・保育園児 | 学校よりも容易に変われるので小学入学前がおすすめ |
受験前 | 精神バランスを崩しやすいので適していない |
小中高大学入学前 | 学期途中での転校が必要ないので適している |
子供が複数いる場合 | 思春期に近い子供に合わせ、中学高校への入学前 |
未成年の子供は学校と家庭での生活が全てですので、親の離婚で転校するということは子供とって一大事です。なるべく転校によるストレスを軽減してあげられるタイミングを見て、離婚の時期を決めることをおすすめします。
税金の面では年初がお得
所得税法上、離婚は年が明けてすぐに行った方がお得と言えます。というのも扶養の判定をするのは前年の12月31日時点ですので、たとえ年が明けてからすぐに離婚したとしても年内については所得税の配偶者控除が受けられるということになります。
一日も早く離婚したいという人以外、離婚のタイミングを年末か年明けかで悩んでいるなら年明けにした方がお得です。わずか数日の違いで配偶者控除が0円か38万円かに大きく変わります。
転勤やボーナス査定を考えるなら3月中に
4月からの転勤が決まっている方や夏のボーナスのことを考えるなら3月中に離婚した方が良い場合があります。4月は新年度が始まり入学や進学の時期でもあるため、子供の入園や転校を考えても都合が良いタイミングとなります。
夏のボーナスの査定を前年度の3月の給与から算定する会社もありますので、3月まで離婚をしない方がボーナスが多くなる人もいます。専業主婦が離婚によって働く場合も、新年度が始まる直前まで夫の健康保険に入っていられるというメリットがあります。
離婚する時大切なのは事前の準備と心構え
離婚する時にはお金や子どもといった条件や離婚のタイミング、周囲への対応など決めなければいけないことがたくさんあります。
離婚をいち早くしないと生命や身体に危険が及ぶような状況以外では、一旦冷静になって着々と離婚への準備を進めることをおすすめします。離婚を進める上で大切なのは、どのように離婚をして離婚後の人生をどのように生きたいかということです。
離婚の準備で得た知識は、今後の話し合いや離婚後の生活にも必ず役に立ちます。スムーズに離婚をし、いち早く新しい生活を始められるよう、入念に準備と心構えをしましょう。
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