20歳未満の子どもを持つひとり親家庭では、母親が子供を引き取って育てる割合が昔に比べて増えています。統計では全体の8割近くにまで上昇しています。
その一方で母子家庭のおよそ半数が、生活必需品の購入にも苦しむ低所得者層となっているのが現状です。そこで国や自治体では母子家庭でも子供と健やかに暮らすため、様々な補助や手当制度を整備しています。
これらの補助には子供の教育や医療にかかるものはもちろん、自身の資格取得に役立つ制度もあります。子供が巣立った後の未来予想図を描きながら、上手に制度を活用してみてはいかがでしょうか。
国や自治体による母子家庭の補助・手当
国やお住いの自治体では母子家庭に対して様々な補助を行っています。子供の学費や養育のための補助「子供関連」と母子家庭の生活全般を支える「生活関連」、シングルマザーの就業をサポートする「就業支援関連」の3つの項目ごとに解説していきます。
母子家庭の補助【子供関連】
母子家庭の貧困問題を解決するために、国や自治体では様々な補助を設けています。離婚して母親が子供を引き取り一人で育てる場合、非正規でしか働けないためにどうしても収入が低くなってしまいます。
その収入をサポートするための手当は以下のような内容です。母子(父子)家庭に限定した手当もありますので、自身が対象となっている場合は忘れずに手続きをしましょう。
児童手当 | 児童扶養手当 | 児童育成手当 | 特別児童扶養手当 | |
対象世帯 | 中学卒業までの子供を養育している保護者 | 父または母の一方からしか養育を受けられないひとり親家庭 | 18歳までの児童を扶養するひとり親家庭 | 精神・身体に障害がある20歳未満の児童を持つ家庭 |
金額(月額) | 3歳未満…一律15,000円 3歳~小学校就学前…10,000円~15,000円 中学生…一律10,000円 所得制限限度額以上…5,000円 | 児童が1人…10,000円~42,500円 児童が2人…15,000円~52,500円 児童が3人…18,000円~58,500円 | 児童1人につき13,500円 | 1級…51,700円 2級…34,430円 |
申請方法 | 窓口へ持参・郵送 | 窓口・インターネット申請 | 窓口へ持参 | 窓口へ持参 |
必要書類 | ・認定請求書 ・マイナンバー確認書類 ・健康保険証 ・本人確認書類 ・振込口座情報 ・課税所得証明書 | ・戸籍謄本 ・住民票の写し ・預金通帳 ・所得証明 ・年金手帳 など | ・戸籍謄本 ・銀行口座番号のわかるもの ・本人確認書類 | ・障害を証明するもの ・戸籍謄本 ・預金通帳 ・振込先口座申出書 |
支給時期 | 認定請求した付きの翌月分から年三回4カ月分をまとめて | 奇数月に前月までの2か月分が振り込まれる | 申請した月の翌月分より | 年三回 |
申請窓口 | 自治体窓口 | 自治体窓口 | 自治体窓口 | 自治体窓口 |
母子家庭の補助【生活関連】
母子家庭への補助は子供の養育のためだけでなく、家賃や住民税の減税といった生活全般に係る補助もあります。全国で対象が同じ補助もありますが、地域や家族構成によって補助額が異なるものもあります。
住宅手当 | 住民税減税 | 寡婦控除 | 生活保護 | |
対象世帯 | 20歳未満の児童を養育している母子(父子)家庭で月額1万円以上の家賃を払っている家庭 | 前年の合計所得が135万以下の寡婦またはひとり親家庭 | 夫と死別・離別 前年の合計所得が500万円以下 など | 健康で文化的な最低限度の生活が出来ない世帯 |
金額(月額) | 5,000円~10,000円 | 非課税 | 住民税控除 (26万円~非課税) | 地域・収入・家族構成で異なる |
申請方法 | 窓口へ提出 | 必要なし | 確定申告時 年末調整時 | 申請書を提出後訪問による面談、聞き取りなどの調査後支給のけってがされる |
必要書類 | ・申請書 ・戸籍謄本 ・住民票の写し ・所得証明書類 ・賃貸借契約書 ・児童扶養手当証書 ・家賃の領収書 ・住民税(非)課税証明書 ・銀行口座の分かるもの | なし | なし | ・生活保護申請書 ・資産報告書 ・(無)収入報告書 |
支給時期 | 年3回~4回 | - | - | 随時 |
申請窓口 | 自治体窓口 | - | - | 福祉事務所窓口 |
母子家庭の補助【就業支援関連】
非正規労働に陥りがちなシングルマザーの収入アップを目的とした、就業支援関連の補助もあります。こちらは資格取得や高校卒業認定試験合格のための教育訓練や対象講座受講料を負担してくれる補助となります。
上手に活用して資格をとり、就職に生かせれば今後の世帯収入大幅アップも期待できます。自分のキャリアアップのためにもこのような補助を活用してみてはいかがでしょうか?
自立支援教育 訓練給付金 | 高等職業訓練 促進給付金 | 高等学校卒業程度認定試験合格支援事業 | |
対象世帯 | 20歳未満の児童を扶養している母子家庭 | 20歳未満の児童を扶養し 看護師・保育士などの資格取得を目指す母子(父子)家庭 | 母子(父子)家庭の親が高校卒業認定試験の合格を目的とした講座を受けた場合 |
金額 | 上限20万円 | 月額10万円(上限4年) 非課税世帯は月額75,000円 | 対象講座の受講料の60% |
申請方法 | 対象の教育訓練修了後、申請書を提出 | 事前相談後支給申請を行う | 対象講座終了後30日以内に申請 |
必要書類 | ・戸籍謄本 ・児童扶養手当証書 ・受講対象講座指定通知書 ・修了証明書 ・受講費領収書 | ・支給申請書 ・戸籍謄本 ・住民票 ・所得証明書 ・児童扶養手当証書 ・本人確認書類 など | ・指定申請書 ・児童扶養手当証書 ・単位取得証明書 ・受講講座の内容が分かるもの |
支給時期 | 随時 | 修業期間の全期間 | 随時 |
申請窓口 | 自治体窓口 | 自治体窓口 | 健康福祉センターなど |
まだまだある!母子家庭の助成・減免制度
上でご紹介した補助以外にも、国や自治体では様々な助成や税金の免除をしています。条件や対象に当てはまれば以下のような補助を受けられますので、自治体の窓口などで相談してみましょう。
医療費助成・健康保険の免除
国民健康保険に加入していることが条件になりますが、医療費の一部を自治体が負担してくれたり、保険料の支払い額が減免されることがあります。対象世帯や条件はこちらです。
健康保険料の減免 | 医療費助成 | |
対象世帯 | ・母子家庭 ・父子家庭 ・ひとり親家庭に代わって子供を育てている祖父母世帯 | 18歳までの子供とその親・養育者 |
条件 | 前年所得金額による 国民健康保険に加入している | 所得制限あり 国民健康保険に加入している |
引っ越し代の貸付制度
20歳未満の子供を養育している母子・父子家庭を対象に、最大26万円の転居資金を貸し付けてくれる「母子・父子福祉資金貸付制度」があります。こちらは国の制度となり次のような使い道が可能です。
- 引っ越し費用
- 子供の進学費用
- 子供の就職費用
- 子供の結婚費用
- ひとり親の事業準備資金
また各自治体ごとにも引っ越しや転居に必要な資金を借りられる制度があります。離婚に伴い住んでいる家を出なければいけなくなったが、引っ越し費用を工面できないという方は、ぜひ貸付制度を活用してみてはいかがでしょうか。
学費の負担に関する支援金や給付金
子供が大きくなってくると進学に伴う費用がかかってきます。特に私立の高校に進学する場合は、学校によって異なりますが授業料だけでも年間100万円以上必要になることもあるでしょう。
文部科学省が行っている「高等学校就学支援金」という制度では、高校の学費を負担してくれます。ひとり親家庭に限定されず、次のような条件に当てはまれば支援を受けられます。
・課税標準額(課税所得額)× 6% - 市町村民税の調整控除額で計算される算定基準額が304,200円 (算出基準額)未満(令和2年7月支給分から)
・両親のうちどちらか一方が働き、高校生一人(16歳以上)、中学生一人の子供がいる世帯
高等学校等就学支援金制度:文部科学省
保育料の減免
生活保護世帯やひとり親世帯の中でも市町村民税が非課税の世帯に限り、保育料が無料になります。また自治体によって収入ごとに第一子から無料になったり、第一子は半額で第二子以降は無料になるなどの場合があります。お住いの場所によって減免の内容や手続きの手順が異なります。
保育料の免除や減額は申請した日の翌月から適用され、その条件が続く限り受けられますが、実家に入ったり実家の近くに住んで援助を受ける場合は対象から外れる場合があります。
上下水道料金や交通機関の割引
児童扶養手当を受給している世帯では、上下水道料金や交通機関の割引が受けられることがあります。上下水道料金はお住いの地域を管轄している水道局へ申請し、基本料金から毎月一定の金額が免除されます。
交通機関の割引はJR・都営バス・市営バスで受けられる自治体があります。申請の窓口は自治体となりますので、児童扶養手当の手続きと併せて相談してみましょう。
コロナ関連の応援金・給付金
新型コロナウイルス感染症の影響で経済的に打撃を受けた母子家庭を対象に、国や自治体では臨時の給付金を出しています。厚生労働省ではコロナの影響によるひとり親世帯の生活を支える支援として次のような対策を実施しています。
- 低所得のひとり親世帯への臨時 特別給付金
- 緊急小口資金・総合支援資金
- 社会保険料等の猶予
- 住居確保給付金
- 雇用調整助成金
- 休業支援金
- 総学校休業等対応助成金・支援金
その他の助成・減免制度
上記以外でも自治体独自に行っている母子家庭向けの助成や減免制度があります。たとえば次のような内容となっています。
- 市営住宅の抽選に有利になる
- 公営住宅の家賃が軽減される
- 公営住宅への引っ越し費用が安くなる
- 住宅購入で手当が出る
住宅に関する制度には、対象の自治体に一定期間住まなければいけないなどの条件があります。離婚で転居する予定がある、住みたい自治体があるといった場合は、あらかじめ転居先の補助内容を調べておくことをおすすめします。
母子家庭の補助や手当に関する注意点
母子家庭の補助や手当に関しては、条件が異なるなどの注意点があります。せっかく申請したのに思うような補助が受けられないということが無いよう、事前にしっかりチェックしておきましょう。
子供の年齢や人数によって金額が異なる
補助の内容によっては子供の年齢や人数によって支給される金額が異なる場合があります。子供の年齢は主に次のように分けられます。
- 幼児
- 小学校入学まで
- 小学校卒業まで
- 中学校卒業まで
- 18歳になってから最初に3/31を迎えるまで
- 20歳未満
また補助を受ける対象が第一子かそれとも第三子以降かでも、子供一人当たりに支給される手当の金額が違ってくることがあります。詳しくは申請時に窓口までお問い合わせください。
制限以上の年収がある場合は減額されることも
児童扶養手当では、限度額以上の所得があると支給される金額が減らされたり、支給自体が停止されることがあります。扶養親族の人数によって限度額が異なり、全額支給・一部支給・不支給の3種類に分けられます。
児童手当では扶養親族の人数に応じて決められた上限所得額を超えてしまうと、子供一人につき月額5,000円までと制限されます。医療費助成金制度でも所得制限があり、上限を超えると補助を受けられなくなります。
国や自治体の情報はこまめにチェック
国や自治体が行っている母子家庭への補助は、情勢や年度が替わると条件や金額我変わってきますので、情報をこまめにチェックすることをおすすめします。国が定める補助に関してはこちらをご覧ください。厚生労働省(母子家庭等関係)ホームページ
母子家庭の相談先一覧
母親一人で働きながら子供を育てていかなければならないと、どうしても社会から孤立して周囲に相談したり心配事を共有できる機会が減ってきます。しかし一人で抱えきれない悩みがある時には、次のような相談先に問い合わせてみましょう。
手当の申請や相談
母子家庭の手当や料金の減免に関しては、お住いの自治体各担当窓口までお問い合せください。自治体によっては専門の相談員がいたり、ひとり親家庭の相談窓口を設けています。
すでにひとり親家庭の方はもちろんですが、この先離婚を考えている、離婚が決まってどのような補助があるか知りたいという方の相談も受け付けています。
就業などの悩みや支援
母子家庭の就業に関する悩みは都道府県が設置している「母子家庭等就業・自立支援センター」に相談しましょう。仕事の相談だけでなく、生活全般や法律関係のアドバイスなど様々な支援を行っています。
子どもの発達や養育に関する悩み
子供の発達の悩みは「子ども家庭支援センター」へご相談ください。地域によっては遊び場を併設していますので、子育てや家庭に係る相談をゆっくりできます。
また児童相談所とも連携を取っているので、様々な事情により子供を育てることが出来なくなった時にも相談に乗ってくれます。
パートナーからのDVやモラハラ
恋人やパートナーからの暴力に悩んだら DV相談ナビにお問い合わせください。こちらは内閣府の男女共同参画局が提供しているサービスで、全国共通の電話番号「#(シャープ)8008」から相談機関を案内するナビダイヤルへ繋がります。
身体への暴力だけでなく言葉の暴力やモラハラなどにも対応しています。専門の相談員のアドバイスを受けられるだけでなく、同行による支援や保護も行っています。
法律相談
法律に関して相談したい時は、 法テラス日本司法支援センター までお問い合わせください。こちらは法律相談ができる公的法人です。弁護士費用は高額というイメージですが、あなたの経済状況に合わせた無料の法律相談(3回まで)や弁護士費用の建て替え制度があります。
一人で悩まずまずは専門家に相談してみましょう。
母子家庭の補助はお近くの自治体窓口へ
今の日本では3組に1組の夫婦が離婚しているため、シングルマザーやシングルファザーとして子供を育てている方が少なくありません。ただ母子家庭ではいまだに経済的な不安が多いのが現状です。
子どもを健やかに育て安心して暮らすためには、国や自治体が実施している手当や補助制度を上手に利用しましょう。特に自治体ではひとり親専用の窓口を設けていることもありますので、「こんなことで相談するのは…」などと悩まず、気軽に相談することをおすすめします。