養育費は子どもの監護や教育のために必要な費用であり、子どもが自立するまでは支払う義務があります。夫婦が離婚をした場合、多くの方は話し合いによって金額を決定していくわけですが、実際のところ、どのくらいの金額を支払う必要があるのでしょうか。
今回は養育費の相場、そして養育費を減らしたいときの対処法について解説していきますので、離婚を考えている方や、養育費を減額したいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
養育費の相場について
まずは養育費の相場について確認していきましょう。
養育費は、子どもがいる夫婦が離婚した際は必ず支払う必要があります。金額については夫婦で話し合って、自由に金額を決めていくわけですが、実際はどのくらいの金額が支払われているのでしょうか。
養育費の平均金額は?
厚生労働省が発表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、全国の母子世帯、父子世帯及び養育者世帯の平均月額は、母子世帯では 43,707 円、父子世帯では 32,550 円となっています。
詳しくは後に譲りますが、この金額は子どもの数、子どもの年齢、相手や自分の年収によって算出されます。基本的には養育費を支払う側の年収が高い場合や、親権者の年収が低い場合、また子どもの年齢が高い場合も養育費は高くなります。
養育費の算出方法
養育費は基本的には夫婦の話し合いによって決定されますが、話し合いで決着がつかなければ、離婚調停や裁判といった手段によって、家庭裁判所が決めることになります。
裁判所は「養育費算出表」に基づいて養育費を算出します。金額を決定する要素は以下です。
- 義務者(養育費を支払う側)の年収
- 義務者が給与取得者か自営業か
- 権利者(養育費を受け取る側)の年収
- 子どもの年齢
- 子どもの数
今回は参考までに、権利者(給与所得者)の年収が200万円、年齢が0歳~14歳の子どもが1人の場合、義務者(給与所得者)の年収に応じて養育費はどのように変わるか、以下にまとめてみましたので、参考にしてみてください。
義務者の年収 | 養育費(月額) |
100万円 | 0~1万円 |
200万円 | 1~2万円 |
300万円 | 3~4万円 |
400万円 | 3~4万円 |
500万円 | 4~6万円 |
ただし、実際のところ、裁判所は「養育費算出表」以外にも考慮すべき点があれば、それに応じて養育費の増減の判断をしますので、必ずこの金額を支払わなければならないというわけではありません。上記の金額はあくまでも目安であることには注意しなくてはなりませんが、養育費の相場を知っておくことで、相手との交渉がしやすくなります。
養育費は減額できるのか
続いては養育費の減額についてお話していきます。
離婚時によく話し合って養育費を決めたものの、後になって経済的な事情が変わり、養育費を減額したいと考える方は少なくありません。例えば、勤務している会社の業績が悪化し、給与が下がってしまった。あるいは両親やご自身の病気、また再婚をしたことで養育費が負担になってしまったという場合もあるでしょう。
そうした場合、養育費は減額することができます。
そこで、本項では養育費の減額が認められるケースと、減額したいと思ったときに取るべき行動について解説していきます。
減額が認められるケース
養育費の減額が認められるケースには以下のようなものがあります。
- 予測不能の事態により、義務者の収入が減った
- 権利者の収入が増えた
- 再婚をしたことにより、再婚相手およびその子どもとの間に扶養義務が発生した
まず、予測不能の事態による収入の減少とは、失業や病気といった理由で働けなくなった場合を指します。このような突発的な事情により、経済的に余裕がなくなったと判断されれば、養育費を減額することができます。
ただし、減額が認められるのは、あくまでも予測ができなかった場合のみで、例えば、自ら望んで収入の低い職に転職したなど、収入の減少が予測できたと判断された場合は減額されない可能性があります。
また、権利者の収入が離婚後に増えた場合も、養育費の減額が可能です。
最後に、再婚をしたことにより、再婚相手およびその子どもとの間に扶養義務が発生した場合ですが、このように新たに扶養義務が発生した際は、新しい家族との生活が優先されますので、養育費がその生活の負担になっているということであれば、減額は妥当と判断される可能性が高いです。とはいえ、以前のパートナーとの間の子どもの養育義務が消滅したわけではありませんので、支払わなくて良いというわけではないという点に注意してください。
なお、権利者(親権を持ってる方)が再婚をしたというだけでは、基本的に養育費の減額は認められないケースが大半です。
養育費を減額したいときにとるべき行動
前項で紹介したケースに当てはまった方は、養育費を減額できる可能性があります。しかし、勝手に支払う金額を変えることはできません。しかるべき手順を踏まなければ、未払いと同じ扱いになり、場合によってはあなたが不利な状況に陥ることもあります。
以下の手続きを経て、余計なトラブルに巻き込まれないようにしましょう。
1. 元パートナーと話し合う
養育費を減額する最も簡単な方法は、元配偶者と話し合い、養育費の減額を認めてもらうことです。この方法であれば、家庭裁判所に申請手続きをする必要がないので、両者の合意さえあれば、容易かつスピーディに養育費を減らすことができます。
一方で、第三者を入れない交渉になるので、口約束だけになってしまいやすいというデメリットがあります。公正証書などを自分たちで作成し、法的に効力がある書面にしておくことで、約束を翻されるというリスクを回避しましょう。
2. 養育費減額請求調停を起こす
経済的な問題というのは生活の質に直結しますので、残念ながら当事者同士の話し合いではまとまらないことも少なくありません。相手と金額の折り合いがつかなかったり、話し合いそのものを拒否されているというような場合は、家庭裁判所に対して「養育費減額請求調停」を申し立てることができます。
自分で申し立ての手続きを行う必要があり、また調停が開かれるのが1ヶ月に1度程度であることもあって、時間と手間がかかる方法ではありますが、家庭裁判所という第3者が間にはいることで、公平な結論を出すことができるというメリットがあります。
また、 養育費減額請求調停にて合意に至った場合、家庭裁判所によって調書が作成されますので、合意したにも関わらず、相手が従わない場合でも、法的な手段に訴えることができます。
この調停でも合意に至らない場合は裁判になり、裁判所が下した決定に従うことになります。
養育費を払わないことで起こるリスク
最後は、養育費を支払わないことで起こるリスクについてご説明していきます。
養育費が経済的な負担になっており、払いたくても払えないという状況に陥ってしまった際に、絶対にやってはいけないのが未払いのまま放置することです。
離婚の際に離婚協議書を作成していたり、離婚調停や裁判によって離婚をした場合、勝手に支払いを辞めてしまうと、相手が公正証書を理由に法的手段に出たときに、どうすることもできず、強制執行によって、強制的に養育費を支払わなければならない状況になる可能性があります。
養育費の減額は法的に認められた権利ですので、払えないからといって放置をせず、必ず話し合いや養育費減額請求調停の手続きを行って、トラブルにならないように注意しましょう。