子供がいる夫婦の場合、子供について決めなければいけないことが多く、離婚後の手続きが増えてきます。また子供の年齢や学年に応じて離婚に適したタイミングや離婚の伝え方を考えなければなりません。
今回の記事では子供がいる場合の離婚の仕方や流れなどを詳しく解説していきます。忘れてはいけない名義変更や申請など、離婚に際して大切なこともご紹介します。
離婚は決して不幸な選択ではありません。今よりもっと幸せになるための手段と考え、子供と自分の将来のためにできることを一つづつクリアしていきましょう。
子供がいた場合の離婚の仕方・流れ
子供がいる夫婦の場合、子供のいない夫婦と比べて離婚の仕方が異なり、離婚の際に話し合う内容が増えます。こちらでは子供がいる夫婦が離婚に至るまでの流れを見ながら、どんなことを決めていくべきか解説していきます。
離婚について夫婦で話し合う
子供がいてもいなくても離婚の合意に至るまでは夫婦間の話し合いが欠かせません。お互いに離婚したいと考えるまでの理由を明確にして、気持ちを整理していきましょう。
もし離婚の話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所に「夫婦関係調整調停」を申し立て、調停委員が間に入ってお互いの主張を聞き、離婚すべきかどうかの他に離婚の際に決めなければならない項目についても話し合いを進めてくれます。
一方的に離婚をしたいけど相手が合意せず、調停も不調に終わった場合は離婚裁判で争うことになります。ただしこの場合民法の第770条に定められてる「法定離婚事由」に該当しなければ離婚が認められません。
子供について決めることを確認
離婚することにお互い合意したら、まずは子供についてのことを決めていく必要があります。子供について決めるべき項目は以下の通りです。
親権 | 未成年の子供がいる場合、離婚後はどちらかの親が単独で親権を持つ 調停や裁判になった場合は収入状況や環境、子供の意思により決まる |
養育費 | 未成年の子供がいる場合、年収・子供の年齢・人数に応じて金額を決める まとまったお金が必要になった時の取り決めも 金額が話し合いだけでまとまらない場合は養育費用算定表を使う |
面会交流 | 子供と離れて暮らす方の親とどのように面会するかを決める 日時・頻度・場所・子供の受け渡し方法など |
戸籍・姓 | 子供の戸籍をそのままにするか、別の戸籍を作って子供を入れるか決める 子供の姓を変える場合は「子の氏の変更許可申出」が必要 |
特に親権をどちらにするかは離婚届提出時にチェックをする項目があります。必ず離婚する前までに十分話し合って決めてください。
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その他について決めることを確認
子供についておおよそのことが決まったら、今度は養育費以外のお金に関することを確認していきます。お金に関する決め事は以下の通りです。
婚姻費用 | 離婚までの間に別居期間があり、生活費をそれぞれ負担していた場合、婚姻費用の清算が必要。 収入の多い方が少ない方へ一定の生活費を支払う。 |
財産分与 | 結婚中に夫婦が築いた財産は夫婦間で1/2づつ分配する必要がある。 お互いが所有している財産を正確に把握することが重要。 |
年金分割 | 結婚中に納付した年金保険料について、離婚時に納付記録を分割する。 年金支給時にその記録を基にして支給額が決まる。 |
慰謝料 | 離婚原因が不倫や暴力など一方的な理由の場合、慰謝料を請求できる。 |
離婚合意書を作成
子供やお金について決まったことは「離婚合意書」や「離婚協議書」といった書面で残しておくことをおすすめします。書面にせず口約束だけで済ましてしまうと、お互いの記憶違いがあったり約束を忘れられることも考えられます。
離婚合意書の作成は法律などで決められている訳ではありませんが、離婚の条件が合意に至ったということを後に証明できる証拠となります。たとえ元夫婦といえ、後のトラブルを防ぐためにきっちり離婚合意書を作成しておきましょう。
さらに強制力を持たせたいなら「公正証書」の形式で作成するのが一番です。相手が約束を守らなかった場合、公正証書に執行の受諾文言を入れておくと裁判をせずに給与の差し押さえといった強制執行ができるようになります。
新生活の準備をする
離婚に際しての決め事と同時並行で、離婚後の新生活に向けての準備も進めていきましょう。離婚後に現在住んでいる家から出る場合や、専業主婦の場合は住む家や働く場所を決めなければなりません。
こちらは母親が子供を連れて離婚した場合の準備すべき一覧です。
- 住む場所
- 住む家(賃貸で借りる・実家に戻る)
- 就職先
- 実家や周りに育児の協力を求める
- 子供の学校
- 母子家庭で利用できる手当や補助の手続き
離婚をして世帯収入が減少する場合は元夫からの援助や財産分与で当分暮らしていくことも可能ですが、生活の安定には自身の収入を安定させることが第一です。
なるべくなら離婚を考え始めると同時に、仕事についても考えたり職探しを始めると良いでしょう。仕事が思うように見つからない場合は生活保護やその他の公的支援を積極的に活用することも選択肢の一つに入れましょう。
時期を見て離婚届を提出
子供や仕事の状況を見ながら、一番良い時期を見て離婚届を提出します。郵送や代理人による提出も可能ですが、書き間違いがあった場合を考えて、夫婦のどちらかが役所に行って提出することをおすすめします。
子供の年齢別・離婚のタイミング
子供の年齢や学年によって、離婚のベストなタイミングは異なります。こちらは小学校入学前から成人後まで、子供の年齢ごとの離婚のタイミングや注意点です。
小学校入学前 | 離れた親への愛着を感じずに済むため比較的心の傷は浅い 決断したらなるべく早めに離婚するのも一つの方法 |
入学・卒業時期 | 転校や名字が変わっても周囲にバレにくく人間関係に影響が出にくい 年度末の3月に離婚するケースが多い |
思春期 | 離婚の切り出し方や子どもへの対応に細心の注意が必要 場合によっては離婚を延ばした方が良い場合も |
高校・大学受験前 | 子供がナーバスになりやすい時期のため離婚は避ける |
成人後 | 子供が自立するまで離婚を待つと経済的にも安心できる 同居している場合は事前に相談が必要 |
結婚式・入籍前 | 子供の結婚式や入籍が終わって落ち着いたタイミングで 子供の意見を聞いて対応するのがおすすめ |
ただし子供や自分への暴力・暴言が繰り返しある場合は、上のタイミングの通りではありません。子供への悪影響がありますので、なるべく早く家を出て離婚を成立させることを最優先にしましょう。
離婚後にすべき子供関係の手続き
子供を連れて離婚した場合、離婚後にさまざまな書類の提出や手続きが必要です。こちらでは主な手続きの方法や注意点を解説していきます。
子供と一緒の戸籍にするには「子の氏の変更許可申出」を提出
母親と子供が一緒の戸籍を作るには家庭裁判所で「子の氏の変更許可申出」の手続きが必要です。というのも何も手続きをしないと離婚後は父親が筆頭者の戸籍から母親だけが抜けて、子供はそのままという状態になるためです。
子供を連れて離婚した場合でも子供と母親の戸籍が違う、名字が違うという状態になります。それを解消するためにまずは子供の名字(氏)を母親と同じ氏に変更する手続きが必要です。
必要なもの | ・子供と両親の戸籍全部事項証明書 ・収入印紙800円分 ・連絡用郵便切手 ・届出人の印鑑 |
申請先 | 子供の居住地がある家庭裁判所 |
裁判所に届け出後、何も問題が無ければ20日前後で「子の氏の変更許可」謄本が届きます。これを役所の戸籍課に持って行き、一緒に「入籍届」を提出し、晴れて一緒の戸籍になれるという手順になります。
児童手当の受取人変更
中学生までの子供を養育している保護者は、支給される「児童手当」の受取人変更が必要です。婚姻期間中は児童手当の受取人は家計を中心となって支えている方の口座に支給されます。
離婚により養育者が母親一人になった場合、父親の口座に入金されていたものを母親へと変更する手続きを行ってください。
同じ市区町村内で引っ越しをする場合は「住所変更届」提出すればOKですが、違う自治体へ引っ越す場合は手続きが異なります。手続きの方法や手順は以下の通りです。
必要なもの | ・児童手当認定請求書 ・申請者名義の普通預金通帳 ・申請者と子供の健康保険所 ・申請者の課税(所得)証明書 ・マイナンバー通知カード ・本人確認書類 ・届出人の印鑑 |
申請先 | 引っ越した先の自治体窓口 |
申請期限 | 転出予定日から15日以内 |
手順 | 1.以前の役場で「受給事由消滅届」を提出 2.新しい役場で上記書類を提出 |
児童手当の変更には期限があります。この期限を過ぎてしまうと受給できなくなりますので、忘れずに手続きをしましょう。
学資保険や子ども名義保険の受取人変更
学資保険や子ども名義の保険に加入している場合は、受取人を父親から養育する母親へ変更できます。子供が未成年の場合は親権者が手続きを代行してすることになります。
離婚後も契約者や受取人をそのままにしておくと、勝手に保険を解約されてしまう可能性があります。受取人変更の手続きは加入している保険会社へ詳しい内容をお問い合わせください。
学校や保育園に世帯主の変更
子供が通っている保育園や学校に世帯主の変更を届ける必要があります。転校や転園をする場合は、必要な書類に新しい世帯主を記入します。学校が変わらない場合は担任の先生などに離婚したことを伝え、必要な書類をもらってください。
児童扶養手当・医療費助成の申請
ひとり親家庭で18歳未満の子供を養育している場合、児童扶養手当が支給されたり医療費の助成が受けられます。児童扶養手当の手続きの手順は以下の通りです。
- 自治体役場に離婚届を申請
- 児童扶養手当の申請
- 翌月からの受給資格を得る
- 児童扶養手当の振り込み(年3回)
申請には税書類などが必要になる場合があります。詳しくはお住いの自治体窓口までご相談ください。
子供名義の預金・貯金通帳の名義変更
離婚で子供の住所や名字が変わった場合、子供名義の銀行口座の名義・住所変更をしましょう。学校によっては子供名義の銀行口座から給食費やその他の費用を引き落とすこともあります。
子供の銀行口座名義変更に必要な書類や手続きは、それぞれの金融機関までお尋ねください。
年末調整で寡婦控除の申請
離婚して初めての年末調整の際には、寡婦控除の申請を忘れずにしましょう。寡婦控除は令和2年度に「ひとり親控除」と改正され、以下の要件をすべて満たしている場合に所得税から35万円を差し引くと変更されました。
- 現に婚姻をしていない方であること
- 生計を一にする子供がいること
- 所得が500万円以下であること
- 事実上婚姻関係と同様の事情にある者がいないこと
自営業の方は令和2年の確定申告からの適用となります。
離婚を子供に伝える際の注意点
子供に両親の離婚を伝える際、注意しなければならないのは話す内容はもちろんですが、伝える気持ちを大切にすることです。特に子供は親の感情を読み取って、本心と裏腹にふるまってしまうことがあります。
離婚は子供のせいではないことを強調
離婚を子供に告げる場合、決して子供のせいではないことを強調しましょう。感受性豊かな子供は、両親の仲の悪さや離婚の原因が自分にあるのではと考えてしまう傾向があります。
離婚はあくまでも夫婦間の問題であって、あなたが原因で別れる訳ではないとはっきりと伝えてあげてください。
離婚しても子供への愛情は変わらないことを伝える
たとえ離婚しても、子供への愛情は変わらないことを伝えましょう。離婚して離れて暮らす方の親とは会う機会が減り、どうしても愛情を感じるチャンスが少なくなります。
しかし子供は両親どちらからも愛されたいと思っています。離れていても親であることに変わりがなく、どちらの親も以前と同じように子供を愛していると伝てあげると、子供の情緒が安定してくるでしょう。
相手の悪口や不満を子供に言わない
間違っても離婚した相手の悪口や不満は子供に言わないよう心がけてください。子供にとってはどちらも大好きな親、相手の悪口を聞くと自分の存在まで否定されたように感じてしまいます。
また離婚に至ったのはあくまで本人同士の問題で、子供には全く関係ありません。配偶者として選んだのは自分ですので、子供にその恨みをぶつけるのは間違っています。
環境が変わる時は前もって伝える
もし離婚により引っ越しや転校などが必要な場合は、なるべく早めに子供に伝えましょう。ただでさえ両親の離婚で心が不安定になっている時期です。家庭と同じくらい大切な学校生活にまで変化が及ぶと、子供はとても不安になります。
なるべく子供に影響が少ない時期に離婚をし、その事情を分かりやすく教えると良いでしょう。同時に離婚後に住む家や周囲の環境がどのように変わるかを説明すると安心するはずです。
離婚の理由は隠さず伝える
ある程度離婚の意味が分かる年齢になったら、離婚の理由は隠さず伝える方が良いでしょう。離婚は結婚時よりも幸せになるための選択のはず、気持ちを前向きにするためにも事実を伝える努力が大切です。
もし子供が小さくて理解できない時は、片方の親が遠くに行くと伝えても問題ありません。ただ大きくなって理由を聞いてきた場合は、教えられる範囲内で言うと子供も納得しやすくなります。
子供がいる場合の離婚は手続きや報告をしっかりと
子供がいる夫婦の離婚では子供に関する手続きだけでなく、年齢ごとの離婚のタイミングや子供への伝え方が大切になります。今まで専業主婦やパートで働いてきた方は、住まいと仕事の両方に変化が訪れます。
離婚後の子供との生活をスムーズに安定させるには、早め早めの準備が重要です。ただどうしても経済的な問題があるという場合は、児童手当や児童扶養手当の手続きを行い行政の力を借りながら自立することを目指しましょう。
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