離婚時に夫婦間で争う原因の多くが子供の親権です。今の日本では父親は母親に比べて親権を獲得するには不利だと言われていますが、全く不可能なわけではありません。
こちらの記事では父親が親権者になるポイントやすべきことを解説していきます。親権とはどのようなものなのか、どうすれば父親でも有利に取得できるのか分かるようになります。
もし父親のあなたが子供の親権を取りたいと考えているなら、父親でも親権を取得できることもあると諦めず、子供と自分の幸せのためにできることを頑張りましょう。
父親は子供の親権を取れるのか?
離婚した際、子供の親権を父親が取れるかについて解説します。こちらでは現在の日本における親権の実情についてくわしく述べていきます。
一般的には母親が有利になる
子供がいる夫婦が離婚した場合、親権が母親になる割合は8割以上となっています。今の日本では母親が親権を獲得するのに有利だと言えます。
というのも小さい子供のいる多くの家庭では父親が大黒柱として家計を支え、母親は専業主婦やパート、時短勤務などで仕事量を調整しながら家事と育児を担っています。
いざ調停離婚や裁判となった場合、これまでの養育実績から母親が親権を獲得するケースが多くなるためです。たとえ母親の不倫が原因で離婚したとしても、親権者の決定は離婚の原因に影響を受けません。
裁判ではたとえ有責配偶者であっても、親権者の決定については分けて考えられるという原則があります。
父親が親権を希望する場合
しかしながら子どもがいて離婚する家庭のうち7人に1人は父親が親権を取っています。父親が親権を希望しているケースには以下の2パターンが考えられます。
- 母親が家事や育児を放棄しているなど母親の監護状況に問題がある
- 母親の監護に問題がないがどうしても親権を譲りたくない
母親に問題がある場合、子供の面倒をしっかり見ていて子供が一緒に居たいと思う位の信頼関係を築いている父親なら親権を取れる確率が高くなります。一方で母親に特に問題がない場合はより子供が幸せになるのはどちらかという点が判断の基準となります。
父親が親権者になれる基準
実際に父親が親権者なって子供を育てている家庭はたくさんあります。実際に親権を取るには父親側にこのような環境や条件が求められます。
- 母親が子供を虐待している
- 母親が育児放棄をしている
- 父親に養育実績がある
- 子供と過ごす時間を取れることを証明できる
- 子供の世話をする環境が整っている
- 子供が父親と暮らすことを希望している
子供の年齢が上がるにつれ、子供の「父親と暮らしたい」という意思は尊重されます。たとえ母親が子供を連れて家を出ていった場合でもです。
これは「学校が変わるのが嫌だ」「友達と別れたくない」という子供の意思が尊重されるためです。とはいえベースになるのは父親の養育です。母親以上に愛情を注ぎ、子供を養育するのに十分な時間を取れるのかがポイントとなります。
離婚時の親権者事情を解説
子供のいる家庭では離婚時に必ず決めなければならないのが子供の親権についてです。未成年の子供がいる夫婦の場合、親権者を決めなければ離婚届を受理してもらえません。ここでは親権に関する基本的な知識や親権者を決める際の手続きについて解説していきます。
親権と監護権の違い
親権と似たような意味で「監護権」というものがありますが、その違いについて見ていきます。親権とは未成年の子供に対する養育や監護をする権利のことで、財産管理権と身上監護権に分けられます。
- 財産管理権(法律行為に対する同意権・包括的な財産の管理権)
- 身上監護権(身分行為の代理権・居所指定権・懲戒権・職業許可権)
両親のいる家庭では母親父親両方が親権を持っています。しかし離婚した場合は、父母のいずれか一方を親権者として定めなければなりません。
親権の中でも身上監護権のみを取り出して「監護権」と呼ぶことがあります。監護権は子供の近くにいて子供をしつけたり教育する権利義務のことです。監護権は親権の一部ですので基本的に親権を持つ親が監護権も持つのが原則です。
ただし親権者に何らかの事情がある場合や、親権者でない親の方が監護権者としてふさわしい場合は、親権と監護権を分けて権利や義務を与えることがあります。
親権者を決める手続き
親権者の決め方は離婚と同様に、父親と母親の話し合いによる「協議」から始まります。ただし離婚そのものの話し合いが決裂した場合は、調停の中で親権についても話し合われます。
親権者の決定が調停で決着が付かない場合は、親権者指定の審判に移行して裁判所の判断で親権者が決定されます。また親権者を含む離婚の条件が調停で合意に至らない場合は、離婚訴訟を起こして離婚の条件に付いて争うことがあります。
裁判所による親権者の判断では、次のような項目が基準となります。
- 監護の継続性
- 母性の優先
- 子の意思の尊重
- 離婚に関しての有責性
離婚が成立した後で親権者を変更するというケースもあります。ただし親権者の変更は親の都合によるものでなく子供の健全な成長を助けるためにのみ行われます。
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父親が親権を取るためにすべき8つのこと
父親が親権者となることもありますが、日本ではまだまだ難しいのが現状です。そこで父親が親権を取るためにやるべきことを8つご紹介していきます。
1.まずは冷静になって子供の幸せを考える
どんなに妻との関係が悪くなっても、親権は子供の幸せを第一に考えて決定しましょう。妻の不倫で離婚になったり妻が嫌いになって別れると、憎い妻に子供を渡したくないという気持ちが優先してしまい、自分が親権を持ちたいと考えることもあるでしょう。
ここで大切なのは妻としての配偶者と子供の母親としての配偶者を分けて考えるいうことです。「子供の親権をどちらが持てば子供の幸せにつながるのか」ということが親権者を決める際には最も重要となります。
2.母親の家事・育児放棄の証拠を取る
もし母親が家事の著しい手抜きをしていたり、育児放棄をしているようなら証拠を取って親権争いの判断材料として提出できます。仕事が忙しい、体が弱いなど明確な理由なしで妻が以下のような行動を繰り返すと離婚の理由に該当します。
- 子供に食事を与えない
- お風呂に入らせない
- 何日も同じ洋服を着させる
- 学校に行かせない
- 不倫で朝帰りを繰り返す
特に子供に対する育児放棄(ネグレクト)を証明できれば父親が親権を取るのに有利になります。毎日の行動を日記に付ける、家事放棄を示すメールのやり取りは証拠として保存するなどをおすすめします。
3.勤務時間の調整や転職をして養育時間を増やす
出来るだけ多くの時間を子供に費やすことは、親権を取るのに有利な養育実績として評価できるだけでなく、子供の情緒の安定のためにとても重要です。
会社と相談して時短勤務や業務内容の変更が求められますが、場合によっては転職も検討しなければなりません。逆に全く育児にかかわってこず、子供を引き取った後も親やシッター任せでは親権者になることはまず不可能です。
あくまで親本人と子供との関わりが条件となるので、本気で親権を取りたいと考えるなら離婚を考えるようになった時期から積極的に子供の面倒を見ると良いでしょう。
4.自分の親や兄弟に協力してもらう
子供の養育は基本的には親の責任ですが、どうしても仕事が忙しい時などに頼れる親や兄弟姉妹が近くに住んでいると親権獲得に有利になります。子供にとって養育環境はとても重要で、親権裁判でも大きなポイントになります。
自分の母親を呼んで子供の面倒を見てもらう、実家に子供と共に戻って両親や兄弟と同居するというのも一つの方法です。親や兄弟といった「監護補助者」を準備できるかが親権を取れるかどうかの判断材料となります。
5.子供と離れないようにする
夫婦仲が悪くなったり離婚の話し合いが進むと、顔を合わせることが苦痛になり別居となるパターンが多くなりますが、子供の親権のことを考えると別居はなるべく避けた方が良いでしょう。
もしどうしても別居したいなら子供を連れて家を出るか、相手が出ていくときは子供を連れていかないよう気を付ける必要があります。裁判所や調停で親権者の判断をする際には「現状優先」が原則となります。
子供の環境を変えることは望ましくないということから、別居により子供と離れ離れになるとよほどのことが無い限り再び一緒に暮らすことは難しくなります。
6.弁護士による代理人制度を活用
子供自身の意思表明をするため、弁護士による「子どもの手続き代理人制度」を利用する方法があります。この制度は子供の生活に影響を与える次のような場面で利用できます。
- 両親の離婚調停
- 面会交流
- 親権者指定
- 監護者指定
この制度を利用すると弁護士が子供の代理として、意見や気持ちを調停や話し合いの場で発表してくれます。母親に遠慮してうまく気持ちを言えないという場面では父親の親権獲得に有利になる可能性があるでしょう。
7.子どもが15歳になるまで待つ
15歳以上になると親権の判断に子供の意思が大きく反映されるようになるため、子供が15歳になるまで離婚を待つという方法があります。
一般的に15歳以下の子供の親権は母親であることが重要視されますが、15歳を過ぎると子供が誰と暮らしたいかという意思が親権者や監護者の決定に反映されるためです。
8.別居している場合は面会を継続する
離婚前すでに別居している場合でも面会交流を継続するといった姿勢が親権取得に有利になることがあります。親としてできることを自分なりに行うことが大切で、次のような行動がポイントです。
- 面会交流はキャンセルしない
- 手紙などで自分の気持ちを子供に伝える
- 面会の頻度を増やしたいという気持ちを書面で送る
- 子供の養育費や学費を積極的に負担する
上のような行動が親権者としてふさわしいとして、調停員や裁判官の判断基準となることがあります。子供と離れてしまっても親権をあきらめる必要はありません、子供とかかわりを持ちたいという姿勢が大切になります。
父親が親権者となるためのポイント
父親が親権者になるためにはいくつかのポイントや注意点があります。父親は母親に比べるとどうしても不利になりがちですが、あきらめずに子供のことを考えて行動しましょう。
無理やりの連れ去りはNG
まだ親権をどちらにするのか決めていないのに、無理やり子供を連れ去ることは絶対にやめましょう。親権は裁判や調停などで判断されますので、連れ去ったからと言って親権がもらえる訳ではありません。
場合によっては「未成年者略取罪」として逮捕されることもあります。無理やり連れ去った子どもをいくら大切に監護したとしても、そもそもが違法行為ですので監護実績として評価されることはありません。
さらに離婚の話し合い中や親権裁判の手続き中にこのような行為をすると、親権者の適性を欠くとみなされて大きなマイナスとなります。
監護権者として子供の世話をすることも考える
母親が監護権者として適性を欠く場合は、父親が監護権を持って子供を育てることができます。
監護権は親権の中に含まれていますが、親権を持つ母親が病気で子供を育てられないなどの理由があり、父親の方が監護するのにふさわしいと判断された場合に当てはまります。
ただし未成年の子供の場合は、親権者が日常の養育も行うべきであると考えられています。親権を持っている母親が子供の監護も希望していると、父親に監護権が渡るのは難しいでしょう。
裁判官(調査官)にアピールできる準備をする
調停や裁判で親権が争われる場面で有利になるように、第三者の証言や証拠の準備をすることが大切です。たとえば学校行事によく参加していたという声を証拠としてまとめておきましょう。
ただしアピールできるのは子供への愛情や子どもとの関わり方についてのみです。妻が親権者としてふさわしくないなどのマイナスアピールをし過ぎると、調査員や裁判官の心象が悪くなる可能性があります。
親権に近道はなしと覚悟する
子供の親権は簡単に取れるものではないと理解して覚悟が必要になります。本気で親権を取りたいと思ったら、最低でも半年~1年は母親以上に子供の世話をする覚悟を持ちましょう。
親権は自分のためや跡取りが欲しい自分の親のために取るのではありません。親権は子供の幸せを一番に考えられる親が得られる権利と義務ということを忘れず行動しましょう。
父親の親権取得は専門家に相談
父親が子供の親権を取ることは簡単ではありませんが、7人に1人の父親は子供の親権を持っていると考えれば決して不可能なことではありません。とはいえ調停や裁判では父親が有利になるポイントや注意点があります。
親権を裁判で争う際は法律のプロである弁護士に依頼することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。法律に基づいたアドバイスはもちろんですが、親権取得のために力になってくれるでしょう。