夫婦関係がうまくいかなくなって離婚をしたいと思った時、どんな流れで進むのか、手続きは何が必要なのか不安になるという方が多くいます。
こちらの記事では離婚の不安を解消するために、状況別の離婚の流れや3種類の離婚方法にかかる期間などを詳しく解説していきます。いざ離婚となった時や離婚後に混乱しないために、スムーズな離婚方法を知っておきましょう。
【状況別】離婚までの流れ
離婚の理由や離婚の方法は夫婦によって異なりますが、子供の有無や別居する・しないなど、夫婦の状況をいくつかカテゴライズすることができます。ここでは状況別の離婚の流れを詳しく解説していきます。
別居あり・別居なし
別居期間中はお互い顔を合わせることが無いため冷静になれ、離婚の準備を進められるでしょう。また別居中はもちろんのこと別居前にもすべきことがありますので、後になって慌てないよう確実に準備を進めてください。
- 生活費の確保
- 離婚理由の証拠を確保
- 共有財産の把握
- 住民票の異動
- 離婚の話し合い
- 離婚後の準備
子供あり・子供なし
子供がいる場合といない場合では離婚の流れや決めなければいけないことが大きく異なります。
- 離婚の合意を取る
- 共有財産の把握
- 財産分与についての話し合い
- 離婚後の生活準備
子供がいる場合の離婚では、子供に関して次のようなことを夫婦で決めていく必要があります。
- 親権・監護権
- 戸籍・苗字
- 養育費
- 面会交流
- 学校の変更
- 子供に伝える時期
- 離婚の時期
離婚原因が自分・相手
基本的に法定離婚原因とされる理由が自分にある場合は、「有責配偶者」となり自分から離婚を申し出ることはできません。
一方で相手に離婚原因があるという方は、離婚しない場合でも精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができます。
- 離婚原因の証拠確保
- 慰謝料請求
- 離婚の合意を取る
- 子供やお金について話し合う
合意の有無
合意がある夫婦のケースでは財産分与や子供に関して話し合い、異議がない場合は「協議離婚」によって離婚が成立します。
夫婦の片方が離婚したくないという場合は、家庭裁判所で調停の場を持ちお互いの主張をすり合わせます。それでも納得がいかない場合は裁判離婚に進みます。
次の合意がなくても離婚できる5つの条件に当てはまれば、「裁判離婚」で離婚が認められるという流れとなります。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 悪意で遺棄されたとき
- 生死が3年以上明らかでないとき
- 回復の見込みがない強度の精神病にかかったとき
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
【離婚方法別】離婚までの流れ・時間の目安
離婚の方法には「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の三種類があります。それぞれの流れや離婚までの期間を見ていきましょう。
段階1:協議離婚
協議離婚の場合、お互い離婚することに合意しており、決めるべきお金や子供の問題が解決していれば、役所に離婚届を提出するだけで離婚できます。
日本では離婚した夫婦の約9割が協議離婚を選択しており、最も時間のかからない離婚方法です。
段階2:調停離婚
一方が離婚に納得していなかったり子供の親権などについてお互いの主張が平行線の時は「調停離婚」として、調停員がお互いの話を聞いてすり合わせを行うことになります。調停離婚の主な流れはこちらです。
- 家庭裁判所に調停を申し立てる
- 家庭裁判所からそれぞれに呼出状が送付される
- 第1回調停が開催
- 1回で調停が成立しなければ2回目以降の調停が開催される
- 離婚調停終結
- 調停調書と離婚届を役所に提出し離婚成立
離婚に至るまでの期間は1カ月から長くても1年以内で、調停の実施期間は4回以内に収まることがほとんどです。
段階3:裁判離婚
調停が不調に終わり、先にあげた5つの法定離婚の原因に当てはまる場合は「裁判離婚」へと進みます。調停離婚が話し合いで解決しようとするのに対し、裁判離婚では証拠をもとに裁判所が強制的に問題を解決します。
- 家庭裁判所に訴状を提出
- 約1か月後に第1回口頭弁論日が指定される
- 口頭弁論日では訴えられた方から答弁書を提出
- 月に一度の頻度で審理が繰り返される
- 判決が下される
- 判決に不服な場合は控訴
裁判離婚の期間は短くても1年前後、離婚調停の期間も含めると長いと2年以上かかることも少なくありません。
離婚前に決めておきたい4つのこと
では離婚前に決めなければいけないことを一つづつ詳しく見ていきましょう。決めることは子供のこと・お金のこと・離婚後の生活について・離婚の時期の4項目です。
子供のこと
子供がいる場合、まず親権をどちらが持つか決めなければなりません。親権とは未成年の子供の監護や財産を管理する権利のことで、子供と一緒に暮らして養育するにふさわしい方が親権をとれます。
子供がいる場合は親権をどちらにするか決めないと離婚できませんので、離婚するなら真っ先に話し合いましょう。
離婚すると夫婦のどちらか(多くの場合は結婚時に苗字を変更した女性)が戸籍から抜けることになります。子供は以前の戸籍のままになるため母親が子供を育てる場合は、同居する親子の戸籍や名字が違うという現象が起きます。
これを防ぐため、母親が筆頭者の新しい戸籍を作ったり、子供の名字を変更する手続きが必要になります。
子供の親権を持たない親は親権者に対して子供の養育費を支払わなければないけません。養育費の金額は収入や子供の年齢、子供の数や相手の収入によって変わります。
子供と生活を共にしない方の親には、定期的に子供と会って交流ができる「面会交流」の権利があります。面会交流に関しては頻度や場所などを事前に決めておくとトラブルを防げます。
お金のこと
日本の法律では夫婦で結婚期間中に協力して築きあげた財産「共有財産」は、離婚時に分けられます。財産分与の対象となる資産は預貯金や投資信託、不動産などです。
一方で結婚前の資産や親からの相続は分与対象に含まれません。また住宅ローンといった負の資産も分与の対象となります。
別居中の生活費として必要な婚姻費用や結婚中に納付した年金は「年金分割」として金額や割合を離婚の際に決定します。もし元配偶者が離婚後に亡くなった場合には遺族年金を受け取れる場合があります。
離婚後のこと
離婚後の生活を安定させるため、母子(父子)家庭で受けられる子供関係の補助や住宅手当などの助成金、就業支援のための公的援助についても事前に確認しておきましょう。
もし母子手当をもらっても生活が立ち行かない場合は生活保護の受給を考えましょう。生活保護は働きたくても働くことができない人の生活を維持するために支給されます。
他にも専業主婦やパート勤めの方は働き方を変えたり、住む場所をどこにするか考える必要があります。
離婚の時期
離婚時期は特に成人前の子供がいる場合は慎重に決める必要があります。離婚の時期は子供の年齢や受験などの状況によって決めることをおすすめします。
離婚後に必要になる主な手続き5つ
離婚が成立した後でも様々な手続きが必要となります。こちらでは子供を引き取った場合の離婚後の手続きについてくわしく解説していきます。
戸籍・住所
離婚して姓(氏)が変わったり、引っ越して住所が変わったら次のような手続きを行います。また子供を自分の戸籍に入れる場合は「子の氏の変更申立」が必要です。
手続き種類 | 必要な時 | 必要なもの | 窓口 |
世帯主変更 住所変更 | 住所や世帯主が変わる時 | 本人確認書類 申請用紙 | 市区町村市民課 |
子の氏の変更申立 | 子を親の戸籍に新たに入れる時 | 子の氏の変更許可申立書 戸籍謄本 収入印紙 郵便切手 本人確認書類 | 家庭裁判所 |
入籍届 | 離婚により別になった親子の戸籍を同じにする時 | 本人確認書類 戸籍謄本 子の氏の変更許可の審判書 | 市区町村戸籍課 |
年金・社会保険
夫の扶養に入っていた方は、年金や健康保険の手続きをしましょう。離婚前から働いている方は、会社の総務の方に相談すると良いでしょう。
手続き種類 | 必要な時 | 必要なもの | 窓口 |
社会保険・厚生年金 扶養(住所)変更 | 住所の変更があった時 扶養家族の変更があった時 | 被扶養者(異動)届 戸籍謄本 住民票 | 勤務先 年金事務所 |
国民年金の変更 | 苗字や住所が変更した時 | 年金手帳 厚生年金喪失証明書 所得証明書 | 市区町村年金課 |
国民健康保険 加入・変更 | 配偶者の健康保険の扶養から外れた時 | 健康保険喪失証明書 | 市区町村国保窓口 |
ひとり親家庭の生活支援
お住いの市区町村では様々なひとり親家庭の生活支援を行っています。自分がどの支援に該当するのか、前もって自治体窓口に相談すると手続きがスムーズに進みます。
手続き種類 | 対象世帯 | 必要なもの | 窓口 |
児童手当 | 中学卒業までの子供を 扶養している保護者 | 認定請求書 健康保険証 本人確認書類 振込口座情報 課税所得証明書 | 市区町村役場 |
児童扶養手当 | ひとり親からしか養育を 受けられないひとり親家庭 | 戸籍謄本 住民票の写し 預金通帳 所得証明 年金手帳 | 市区町村役場 |
児童育成手当 | 18歳までの児童を扶養する ひとり親家庭 | 戸籍謄本 預金通帳 本人確認書類 | 市区町村役場 |
住宅手当 | 20歳未満の児童を養育しているひとり親家庭で 月額1万円以上の家賃を支払っている家庭 | 申請書 戸籍謄本 住民票の写し 所得証明書類 賃貸契約書 児童扶養手当証書 住民税課税証明書 | 市区町村役場 |
日常生活に関すること
上記以外でも本籍地・姓(氏)・住所が変わった場合は、このような手続きが必要です。忘れがちな手続きもありますので、リストにしておくと良いでしょう。
手続き種類 | 必要な時 | 必要書類 | 窓口 |
パスポート | 本籍地・苗字を変更した時 | パスポート パスポート用写真 戸籍謄本 | 旅券申請窓口 |
運転免許証 | 本籍地・苗字・住所を変更した時 | 運転免許証 変更届 住民票 | 管轄の警察署窓口 |
印鑑登録証明書 | 苗字を変更した時 | 登録する印鑑 本人確認書類 | 市区町村役場 |
預金(貯金)通帳 | 苗字・住所を変更した時 | 窓口へお問い合わせください | 各金融機関 |
クレジットカード | 苗字・住所を変更した時 | 窓口へお問い合わせください | 各カード会社 |
子供関係
最後に子供が通っている学校や幼稚園への変更手続きも忘れずに行いましょう。見落としがちな子供名義の通帳や保険なども、変更があった場合には手続きが必要です。
手続きの種類 | 必要な時 | 必要なもの | 窓口 |
転入学 | 子供が転校した時 | 在学・就学証明書 教科書受給証明書 新住所の住民票 | 転校前の学校 市区町村役場 |
子供の通っている学校 | 苗字・住所を変更した時 | 学校へお問い合わせください | 各学校の担任 |
預金(貯金)通帳 | 苗字・住所を変更した時 | 窓口へお問い合わせください | 各金融機関 |
離婚をスムーズにするには事前の準備が大切
離婚は子供の有無や合意のあり・なしによって進め方が異なります。協議離婚が一番早く離婚できる方法ですが、合意に至らないと調停離婚や裁判離婚も検討しましょう。
離婚に際してはお金や子どものこと、離婚後のことなど決めなければいけないことが山のようにあります。離婚をスムーズに行うには手続き等について事前に調べて準備をしていくことが最も大切です。